日本人がスイスで働くには?就労許可の難易度と現実的なルート

日本人がスイスで働くには?就労許可の難易度と現実的なルート

アルプスの絶景と世界最高水準の給与。

多くの人が憧れる環境ですが、日本人がスイスで働くには、欧州の中でも特に高い「就労許可」の壁を越えなければなりません。

「ビザは必要?」「英語だけで働ける?」といった疑問に対し、現地事情に精通した視点で、日本人が採用されるための現実的なルートや必須手続きを徹底解説します。

夢を計画に変えるため、まずは正しいルールと攻略法を知ることから始めましょう。

この記事でわかること
  • 日本人が就労許可を取得するための難易度と審査の仕組み
  • 英語で働ける求人の実態や「研修生制度」などの活用法
  • 世界最高水準の給与と、家賃や保険など生活コストのリアル
  • 渡航前から働き始めるまでに必要な行政手続きの全体像
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目次

日本人がスイスで働くには?許可と難易度

日本人がスイスで働くには?許可と難易度
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アルプスの絶景に、世界最高水準の給与、そして洗練されたライフスタイル。

スイスでの生活に憧れを抱く方は多いですが、日本人がそこで「働く」ための道のりは、実は欧州の中でも特に険しい山道を登るようなものです。

ここでは、最初に立ちはだかる「許可」の壁と、それを乗り越えるための現実的なルートについて、私の経験を交えて整理しました。

まず、全体像を掴むための目安表をご覧ください。

項目EU/EFTA加盟国籍者日本国籍者(第三国)
就労の基本原則自由(届出や簡単な許可申請のみ)原則不可(厳格な許可制)
許可の枠(クォータ)なしあり(2026年は年間8,500人枠など)
優先順位スイス国内と同等の扱い国内・EU/EFTAで人材が見つからない場合のみ
ビザ(査証)不要入国ビザは不要だが、入国前の就労権限申請が必須
主な対象者全職種高度専門職、管理職、特殊技能者

就労ビザではなく滞在許可の取得が必須

就労ビザではなく滞在許可の取得が必須
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「スイスで働くために、就労ビザを取りたいのですが…」。

よく相談を受けるのですが、実はここに最初の大きな誤解があります。

厳密に言うと、スイスには日本のような「就労ビザ」という単体のステッカーは存在しません。

核心となるのは、「滞在許可(Residence Permit)」に「就労の権利」が付随しているかどうかなのです。

90日ルール:観光のビザ免除と「就労」は別物

私たち日本人は、スイスとの二国間協定により、観光目的であればパスポート一つで90日までビザなし滞在が可能です。

チューリッヒ空港のゲートを顔パス感覚で通過できてしまうため、つい「仕事も見つかればそのまま働けるのでは?」と錯覚しがちです。

しかし、90日を超える滞在や、たとえ1日でも報酬を得て働く場合は、全く別の手続きが必要になります。

申請フロー:入国前に「雇用主」が州→連邦へ申請する

具体的には、あなたがスイスに入国する前に、雇用主があなたの勤務地となる州(カントン)の移民局へ申請を行い、国レベルの審査を経て、許可の発行が確約されていなければなりません。

現地の役所でプラスチック製の滞在許可証(Permit BやLなど)を手にしたとき、初めて「あぁ、これで堂々とここで息ができる」と安堵したのを覚えています。

あのカードの重みは、単なる身分証以上のものでした。

誰が申請する?

手続きの主体は、基本的に「雇用主(会社)」です。

あなたが個人で大使館に駆け込んでも、就労許可は申請できません。

「採用が決まる=会社が当局と戦って許可を勝ち取ってくれる」という図式を、まずはしっかりと心に留めておいてください。(出典:スイス連邦外務省(EDA)『Entry and stay in Switzerland』

用語の落とし穴に注意

実は「就労ビザ」という言葉、現地の役所や人事との会話ではほとんど使いません。

「Work Permit(ワーク・パーミット)」や「Authorization(認可)」という言葉が飛び交います。

「ビザ(査証)」はあくまで入国ゲートを通るための切符。

スイスで生活し働くための免許証は「滞在許可証」です。

この違いを知っているだけで、現地のエージェントや人事担当者から「お、この人は仕組みを理解しているな」と一目置かれますよ。


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日本人の就職難易度と非EU枠の壁

日本人の就職難易度と非EU枠の壁
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欧州に長く住んでいると、「スイスの壁は特別に分厚い」と肌で感じることがあります。

なぜなら、スイスの労働市場は「自国民とEU市民を守る」ためにデザインされているからです。

日本人はスイスから見て「第三国(Third countries)」の枠に入ります。

ここには非常にシビアな「優先順位の原則」が存在します。

企業が求められる証明

企業が日本人一人を採用しようとする場合、当局に対して「スイス国内、およびEU/EFTA加盟国(約30カ国・数億人の労働市場)全体を探し回ったが、この日本人以外に適任者がいなかった」ということを証明しなければなりません。

求人を公に出し、応募に来たEU市民を面接し、それでも不採用にした理由を当局に報告する…。

企業にとって、これは相当な事務負担です。

そのため、よほど特殊なスキルや経験がない限り、「手続きが面倒だからEUの人を雇おう」となってしまうのが現実です。

さらに狭き門:第三国枠の「年間クォータ」

さらに、第三国人への許可発行数には「年間クォータ(割当数)」という上限があります。

例えば2026年の枠は、長期滞在のB許可が4,500人、短期のL許可が4,000人の合計8,500人と設定されています。

この狭き門を、世界中の優秀なエンジニア、金融マン、研究者と奪い合うわけです。

突破口はここ

ただし、絶望する必要はありません。

この壁を越えられる「鍵」があります。

それは「専門性」と「希少性」です。

例えば、日本市場に特化したマーケティング経験、特殊なプログラミング言語、あるいは寿司職人のような代替不可能な技術。

これらがあれば、「スイスの経済的利益になる」と判断され、許可が下りる可能性はグッと高まります。(出典:ch.ch『Foreign nationals in Switzerland』

採用担当者の本音と対策

企業が一番恐れているのは「内定を出したのに、許可が下りずに働けないこと」です。

だからこそ、CV(履歴書)には自分のスキルがいかにニッチで、スイスやEUの人材では代替できないかを強調しましょう。

「何でもやります」という謙虚な姿勢より、「私にしかできないことがあります」という明確な強みこそが、人事担当者を「よし、面倒な申請手続きをしてでも欲しい!」と動かす原動力になります。


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英語のみで働ける仕事や求人の現実

英語のみで働ける仕事や求人の現実
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スイスにはドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語という4つの公用語があります。

街のスーパーに行けばドイツ語やフランス語が飛び交っていますが、オフィスの中、特に国際都市のチューリッヒやジュネーブでは、驚くほど「英語だけ」の世界が広がっています。

狙い目:社内公用語が英語の多国籍企業・外資

日本人がスイスで職を得る現実的なルートの一つが、「英語を社内公用語とする多国籍企業」への就職です。

スイスには、製薬大手のロシュやノバルティス、金融機関、そしてGoogleのようなテック企業の欧州拠点が集まっています。

ここでは、会議もメールもカフェテリアの雑談もすべて英語。

現地の言葉ができなくても、業務遂行能力さえあれば採用の土台に乗ることができます。

また、ジュネーブにある国連機関やNGOも、英語(または仏語)がメインの職場です。

こちらは「国際公務員」という別の枠組みになることが多いですが、英語でキャリアを築く有力な選択肢です。

現実:ローカル職は現地語が必須になりやすい

一方で、ローカルなカフェやショップ、地元の中小企業で働くのは、現地の言葉が流暢でない限り極めて困難です。

「英語だけでなんとかなる」のは、あくまで高度な専門職の世界や、特定の外資系コミュニティの中だけの話。

一歩街に出れば、役所の手紙も賃貸契約書もすべて現地語です。

生活の立ち上げには、Google翻訳片手に格闘する覚悟が必要になります。

英語求人の探し方

求人を探す際、LinkedInなどのサイトで「English speaking」とフィルターをかけるのは基本ですが、さらに一歩踏み込んで「Japanese」というキーワードを掛け合わせてみてください。

「英語環境で働ける、日本語ネイティブの専門家」を探しているポジション(例:日本の顧客対応が必要な金融・ITサポート、日本市場向けマーケター)は、実は意外な穴場です。

そこではあなたの「日本語」が、EU市民を出し抜く最強の武器に変わります。


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ヤングプロフェッショナル制度の条件

ヤングプロフェッショナル制度の条件
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「高い専門性も管理職経験もないけれど、どうしても若いうちにスイスで働いてみたい」。

そんな方に残された数少ない、しかし希望に満ちたルートが「ヤング・プロフェッショナル(研修生)交換制度」です。

これは日本とスイスの二国間協定に基づくもので、通常の就労許可とは全く異なる枠組みで審査されます。

対象は、大学や高等専門学校などを卒業した35歳までの若者。

自分の専攻した分野での実務研修を目的として、最長18ヶ月間、スイス企業で給与を得ながら働くことができます。

通常ルートと何が違う?

通常の就労許可で求められる「国内・EU優先の原則」が、この制度では適用されません。

つまり、企業側も「研修生」としてなら、日本人を採用するハードルが極端に低くなるのです。

審査期間も通常4〜8週間程度と比較的スピーディーです。

注意:ワーホリではない

ただし、これは「ワーキングホリデー」とは似て非なるものです。

最大の違いは、「自分で事前に雇用先を見つけ、雇用契約を結んでから申請する」という点。

ワーホリのように「とりあえず行ってからバイトを探す」ことはできません。

あくまでキャリアアップのための「研修」であり、その分野の学位や職業資格と、受け入れ先企業の業務内容が一致している必要があります。(出典:スイス連邦移民局(SEM)『Young professionals (trainees)』

ワーホリとの決定的な違い

よく「スイスのワーホリ」と混同されますが、2026年時点で日本とスイスの間にワーキングホリデー協定はありません。

このヤングプロフェッショナル制度は、あくまで「プロフェッショナルとしての第一歩」を踏み出すためのもの。

「カフェでアルバイト」のような職種では許可が下りず、自分の専門分野(IT、建築、マーケティング等)に関連した企業を見つける必要がある点に注意してください。

その分、帰国後のキャリアには箔がつきますよ。


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看護師や医師など資格認証が必要な職種

看護師や医師など資格認証が必要な職種
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スイスの医療現場や教育現場で働くことは、高い語学力と専門性が求められる分、非常に待遇が良いことで知られています。

しかし、人の命や教育に関わる仕事は「規制職種(Regulated professions)」に指定されており、日本の免許をそのまま使うことはできません。

ここで必要になるのが、「資格の書換え(Recognition / 認証)」というプロセスです。

例えば看護師の場合、スイス赤十字社(SRC)が認証の窓口となります。

ここでは、日本の看護師免許証だけでなく、カリキュラムの詳細、実務経験数などが厳密に審査されます。

語学要件が最大の壁

そして何より高いハードルとなるのが語学力です。

勤務する地域に応じて、ドイツ語、フランス語、またはイタリア語のB2〜C1レベル(上級)の証明が必須となります。

医師:MEBEKO管轄でさらに長期戦になりやすい

医師の場合はさらに複雑で、連邦公衆衛生局(MEBEKO)が管轄となり、EU外の学位を持つ医師が臨床に携わるには、スイスの国家試験に相当するプロセスを経るなど、非常に長い道のりが必要です。

非規制職種との違い

ITエンジニアやデザイナーのような「非規制職種」であれば、雇用主が認めれば明日からでも働けますが、規制職種の場合はこの「認証」が完了しない限り、たとえ採用が決まっていても就労許可が下りません。

書類のやり取りだけで数ヶ月から半年以上かかることもザラにあります。

認証手続きは「渡航前」の戦い

「現地に行ってから語学学校に通って、その後に書き換えればいいや」と考えていると、計画が破綻します。

資格認証には原本の公証翻訳や、カリキュラムのシラバス英訳など、日本にいる間にしか手配できない書類が山ほど必要です。

もしこのルートを目指すなら、まずは語学の勉強と並行して、担当機関(赤十字など)のサイトで「必要書類リスト」をダウンロードすることから始めましょう。

これが最初の一歩です。

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スイスで働くには?必要な手続きと生活事情

スイスで働くには必要な手続きと生活事情
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夢の採用通知を手にしても、そこはまだ登山口に立ったに過ぎません。

スイスでの新生活は、入国直後から始まる行政手続きのラッシュと、世界一とも言われる物価との戦いによって幕を開けます。

ここでは、実際にスイスで働き、暮らすために避けて通れない「仕事探しのリアル」と「お財布事情」について、生活者の視点から詳しく紐解いていきます。


スイスの求人サイトと仕事の探し方

スイスの求人サイトと仕事の探し方
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スイスでの仕事探しは、日本のように「とりあえずリクナビ」で完結するようなシンプルなものではありません。

特に私たち非EU国籍者(第三国人)にとっては、見えない「フィルター」との戦いでもあります。

王道サイト:jobs.ch

まず、現地の求人情報のメインストリームは、やはりオンラインです。

スイス国内で最もポピュラーな求人サイトといえば『jobs.ch』でしょう。

ここには数万件の求人が掲載されていますが、検索する際は少し工夫が必要です。

単に職種を入れるだけでなく、言語フィルターで「English」を選択したり、企業の属性を見極めたりする目が養われます。

必須ツール:LinkedInは「応募+直接アプローチ」の場

また、ビジネス特化型SNSの『LinkedIn』は、スイスでは名刺代わり以上の威力を発揮します。

プロフィールを完璧な英語で整え、”Open to work” のステータスをオンにするだけでなく、興味のあるスイス企業の採用担当者(Recruiter)に直接コンタクトを取るような積極性が、ここでは「熱意」として好意的に受け取られます。

ただし、ここで忘れてはならないのが、前述した「国内優先の原則」に紐づく「求人届出義務(Job registration requirement)」という制度です。

失業率が高い特定の職種(例えば調理師や建設作業員、一部のマーケティング職など)の求人は、一般公開される前にまず地域の職業安定所(RAV)に登録され、国内の求職者に優先的に紹介される期間が設けられています。

つまり、私たちがネットで目にする求人は、すでに「国内では見つからなかった」案件か、そもそも規制の対象外である高度専門職である可能性が高いのです。

勝ち筋:掛け合わせスキル×エージェント活用

これを踏まえると、日本人が狙うべきは、やはり「ニッチな専門性」が求められる領域です。

「日本語ネイティブかつ、SAP導入経験があるエンジニア」や「日本の金融規制に詳しいコンプライアンス担当」など、掛け合わせのスキルで勝負できる案件を、エージェント(Michael PageやRobert Waltersなど)経由で探すのも賢い戦略と言えます。(出典:arbeit.swiss『Job registration requirement』

【主な求人検索ルートと特徴】

検索ルート特徴と日本人への適合度
jobs.chスイス最大級。全職種あるが、独仏語必須の案件も多い。
LinkedIn外資系・多国籍企業の英語案件が豊富。必須ツール。
転職エージェント専門職なら登録必須。非公開求人やビザ交渉の味方に。
Indeed Switzerland幅広く探せるが、玉石混交。アラート機能は便利。
リファレンス(推薦人)の準備を

スイスの選考では、最終段階で「Reference Check(照会)」が行われることが一般的です。

これは、前の職場の上司などに電話やメールで「彼(彼女)の働きぶりはどうだったか?」と直接聞くプロセスです。

いざ面接が進んでから慌てないよう、信頼できる元上司や同僚に「スイスで就活をするので、推薦人になってくれませんか?」と事前に根回しをしておくと、選考が驚くほどスムーズに進みますよ。


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高い給料とスイスの平均年収の実態

高い給料とスイスの平均年収の実態
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給与水準の目安

スイスの給与明細を初めて見たとき、その数字の大きさに、思わず桁を数え直してしまった経験があります。

スイスの賃金水準は間違いなく世界トップクラスです。

職種や州にもよりますが、大卒の初任給レベルでも月額6,000〜7,000フラン(日本円で約100万円以上※)提示されることは珍しくありません。

管理職やITスペシャリストになれば、年収12万〜15万フラン(約2,000万円以上)が「普通の相場」として提示されます。

スーパーのレジ打ちのアルバイトでさえ、時給20フラン(約3,000円以上)を超えるケースもザラにあります。

(※為替レートは変動しますが、1フラン=180~190円換算のイメージでお読みください)

スイス特有:13ヶ月目の給与(13th month salary)

スイスには、日本のような「ボーナス」の概念とは少し違う、「13ヶ月目の給与(13th month salary)」という慣習があります。

これは年俸を12分割ではなく13分割し、12月のクリスマス時期に2ヶ月分を支給するという仕組みです。

雇用契約書にこれが明記されているか確認するのは、生活設計において非常に重要です。

注意点:最低賃金は連邦一律ではない

ただし、注意が必要なのは「最低賃金」です。

スイスには連邦レベルでの一律の最低賃金制度はありません。

ジュネーブ州やヌーシャテル州など、一部の州(カントン)が独自に時給23〜24フラン程度の最低賃金を導入していますが、国全体で保証されているわけではないのです。

そのため、労働協約(GAV)が存在しない業界や職種では、交渉次第で条件が変わることもあります。

高給の裏側:成果主義と解雇のしやすさ

高い給料は魅力的ですが、それは「高いスキルと高い生産性」への対価であり、同時に「解雇のしやすさ」と表裏一体であるという緊張感も、スイスの労働環境の特徴です。

成果を出せなければ、高給取りほど立場が危うくなるシビアさも持ち合わせています。

交渉は「Gross(額面)」で話す

面接で希望給与を聞かれたら、必ず「年収の額面(Gross annual salary)」で答えましょう。

日本のように「手取りでこれくらい」という感覚で話すと、税金や社会保険料が引かれた後に「あれ、思ったより少ない…」となりかねません。

スイスの企業は「総支給額」で契約を結びます。

自分の市場価値を堂々と提示するためにも、事前に『Salarium』(連邦統計局の給与計算機)などで相場を調べておくのが鉄則です。


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移住後の生活費と家賃相場の高さ

移住後の生活費と家賃相場の高さ
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まず家計を圧迫するのは「家賃」

高い給料に浮かれていると、翌月にはスイスの物価という冷たいシャワーを浴びることになります。

「入るのも多いが、出るのも桁違い」。これがスイス生活の真実です。

まず、家計を圧迫する最大の要因は「家賃」です。

チューリッヒやジュネーブといった主要都市で、単身用の小綺麗な1LDK(現地では2.5部屋などの表記)を借りようとすれば、月2,000〜2,500フラン(約39万〜49万円)は覚悟しなければなりません。

しかも、良い物件は内見に数十人が列をなす争奪戦です。

内見時に自分の給与明細や信用情報をまとめた「応募書類セット」を持参し、大家さんにアピールすることさえあります。

健康保険は全額自己負担

次に衝撃を受けるのが、「健康保険料」です。

スイスでは民間保険への加入が義務付けられていますが、日本のように給与天引きで会社が半分負担してくれるわけではありません。

全額自己負担で、毎月300〜400フラン(約6万〜8万円)近くが口座から引き落とされます。

病気にならなくても毎月この出費があるのは、精神的にも堪えるものがあります。

食費も高い:越境買い出しが一般的になるレベル

食費も侮れません。

スーパーで鶏胸肉を買おうとして、2切れで1,500円近い値札を見てそっと棚に戻した日のことを今でも覚えています。

スイス産のお肉は宝石のように高価です。

そのため、国境近くに住む人々は、週末になるとドイツやフランスへ「買い出し越境」をして、トランクいっぱいに食料を詰め込んで帰ってきます。

一方で、電子機器やガソリン代、消費税(VAT 8.1%)などは周辺国より安い場合もあり、すべてが高いわけではありません。

メリハリをつけた生活ができれば、高給与の恩恵を受けて貯蓄を増やすことも十分に可能です。

シェアハウス(WG)という選択

最初から一人暮らしのアパートを契約するのは、審査の厳しさや家具の準備も含めてハードルが高いです。

そこでおすすめなのが「WG(ヴェーゲー)」と呼ばれるシェアハウス。

家具付きで家賃も月800〜1,200フラン程度に抑えられ、何より同居人から現地の生活情報を教えてもらえるメリットがあります。

最初の数ヶ月はWGで足場を固め、試用期間が終わってから本格的にアパートを探すのが、賢い移住のステップです。


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ワーホリではなく研修生として渡航する

ワーホリではなく研修生として渡航する
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結論:スイスはワーホリ協定がない(2026年時点)

「スイスってワーホリで行けますか?」この質問への答えは、残念ながらNOです。

2026年現在、日本とスイスの間にはワーキングホリデー協定は結ばれていません。

フランスやドイツ、イギリスにはワーホリで行けるのに、スイスにはその選択肢がない。

この事実を知らずに計画を立ててしまい、行き詰まるケースが後を絶ちません。

代替ルート:ヤング・プロフェッショナル制度

しかし、ここで諦めるのは早計です。

前半で紹介した「ヤング・プロフェッショナル(研修生)制度」こそが、実質的な代替ルート、あるいはそれ以上の価値を持つ選択肢となり得ます。

ワーホリとの最大の違いでありメリットは、「渡航前から給与と身分が保証されている」点です。

一般的なワーホリでは、現地に着いてからアルバイトを探し、見つかるまでは貯金を切り崩す不安定な生活になりがちです。

一方、研修生制度は事前に雇用契約を結ぶため、初月からスイス水準の給与(業界や州の規定によるが、生活できるレベルの額)が支払われます。

キャリア価値:18ヶ月は「短すぎず重すぎない」絶妙な期間

私の知人は、建築事務所の研修生としてこの制度を利用しました。

彼女は「学生気分のワーホリだと思われたくない。プロとして扱われる環境が欲しかった」と語っていましたが、まさにその通りです。

最長18ヶ月という期間は、単なる異文化体験で終わらせるには十分すぎ、かといって永住を約束するほど重くもない、キャリアの「踊り場」として絶妙な長さです。

生活立ち上げ:雇用契約書があると手続きが通りやすい

この制度を利用する場合、生活のセットアップもスムーズです。

雇用契約書があるため、アパートの契約や銀行口座の開設、住民登録などが、無職の状態で渡航するよりも格段に通りやすくなります。

「スイスで働く」という実績を履歴書に刻みたい若手社会人にとって、これほど恵まれたルートはありません。

年齢制限ギリギリの駆け込みも

この制度の上限は35歳。「若手」といっても、30代中盤までチャンスがあります。

実際に30代で日本の仕事を辞め、キャリアチェンジのきっかけとしてこの制度を利用する人もいます。

「もう若くないから」と諦めず、自分の専門性が活かせる受入先がないか探してみてください。

スイス企業側も、即戦力に近い30代の研修生(Trainee)を安価で雇えるメリットがあるため、意外と歓迎されるものです。


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税金や社会保険の仕組みと手取り額

税金や社会保険の仕組みと手取り額
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スイスで働き始めると、給与から引かれるお金の仕組みが日本とは少し違うことに気づきます。

特に、永住許可(C許可)を持っていない外国人(B許可やL許可の日本人)にとって重要なのが、「源泉徴収課税(Tax at source / Quellensteuer)」というシステムです。

通常、スイス人は確定申告を行って税金を納めますが、私たち外国人は、毎月の給与から税金が自動的に天引きされます。

この税率は、住んでいる州(カントン)、独身か既婚か、子供の有無、そして教会の所属有無(教会税)によって細かく変わります。

面倒な確定申告の手間が省けるという意味では楽ですが、手取り額を計算する際にはこの分を考慮しなければなりません。

社会保険の内訳:給与明細で見る代表項目

さらに、社会保険料の天引きも忘れてはいけません。

給与明細(Lohnausweis)を見ると、以下のような項目が引かれているはずです。

  • AHV/IV/EO(老齢・遺族・障害保険等): 給与の約5.3%(雇用主も同額負担)。日本の厚生年金に近い強制加入の保険です。
  • ALV(失業保険): 給与の約1.1%。
  • BVG(企業年金): 第2の柱と呼ばれる年金。年齢やプランによりますが、数%〜引かれます。
  • NBU(非業務上事故保険): プライベートでの怪我をカバーする保険。従業員負担となることが多いです。

手取りの目安

これらを合計すると、だいたい額面給与の15%〜20%程度が社会保険料として引かれ、そこからさらに源泉税が引かれます。

ざっくりとした目安ですが、額面の75%〜80%前後が銀行口座に振り込まれる「手取り(Net salary)」になるとイメージしておくと良いでしょう。

「引かれる分」も意味がある

日本の感覚だと「結構引かれるな」と思うかもしれませんが、スイスの年金制度や失業時の手厚い補償(給与の70〜80%が最大2年間支給されるなど)を知ると、この天引きが決して無駄ではないことが理解できます。

教会税の「No」チェック

住民登録や税金の手続きをする際、「宗教・宗派」を聞かれることがあります。

ここでうっかりカトリックやプロテスタントにチェックを入れると、州によっては「教会税(Church Tax)」が追加で課税されることがあります。

信仰がない、または納税の意思がない場合は、明確に「無宗教(None)」や対応する項目を選ぶようにしましょう。

些細なことですが、年間で見ると数万円の差になることもあります。


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スイスで働くには入念な事前準備が必要

スイスで働く道は、決して平坦ではありません。

非EU国籍というハンディキャップ、厳格な許可制度、そして高い生活コスト。

これらは確かに高い壁です。

しかし、その壁を乗り越えた先には、国際的なキャリア、豊かな自然との調和、そしてプロフェッショナルとして尊重される働き方が待っています。

成功の鍵:情報収集と差別化を徹底する

成功の鍵は、徹底的な「情報収集」と「差別化」に尽きます。

自分がどの許可ルートに該当するのかを正確に把握すること(LかBか、あるいは研修生か)。

自分のスキルがスイス市場でどう評価され、どの企業なら「日本人であること」が強みになるのかを分析すること。

そして、渡航後の生活費や税金をシミュレーションし、資金的な体力をつけておくこと。

行動が変わる一言:「いつか」ではなくロードマップに落とす

「いつか行けたらいいな」ではなく、「202X年にこのルートで申請する」という具体的なロードマップを描いた瞬間から、スイスへの扉は少しずつ開き始めます。

この記事が、アルプスの麓で新しいキャリアを築こうとするあなたの、確かなコンパスになることを願っています。

最後にひとつだけ

もし申請が却下されても、人格を否定されたわけではありません。

スイスの許可行政は「枠(クォータ)」や「政治的状況」に左右されることも多く、運の要素も絡みます。

「今回は縁がなかった」と割り切り、隣国のドイツやオランダを経由して、数年後に実績を携えてスイスへ再挑戦する人もたくさんいます。

諦めず、柔軟に、したたかに。

あなたの挑戦を心から応援しています。


参考情報・公式サイト

記事内で解説した情報の根拠となる、スイス連邦政府および関連機関の公式サイト一覧です。最新の法改正や詳細な申請要件については、必ずこれらの一次情報をご確認ください。

就労・滞在許可の基本ルール(連邦政府・公的機関)

特定の制度・要件(研修生・求人規制)

資格認証・給与計算(ツール・専門機関)

スイスの主要求人サイト

  • jobs.ch スイス国内最大級の求人ポータルサイトです。
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