オーストリアの公用語を解説!なぜドイツ語?英語は通じるの?

音楽の都ウィーンや美しいアルプスで知られるオーストリア。

この国への旅行や滞在を具体的に考え始めたとき、やはり言葉のことが気になるのではないでしょうか。

オーストリアの公用語はドイツ語ですが、一体なぜそうなったのか、そしてドイツ本国で話される言葉との間にはどんな違いがあるのでしょう。

また、観光地では英語が通じるのかどうか、そもそもオーストリアとはどんな国で、人々はどのような文化の中で暮らしているのか。

旅の計画を立てる上での、そうした疑問や不安を解消し、より深い魅力を発見するための一助となる情報を、この記事では詳しく解説していきます。

記事のポイント
  • オーストリアの公用語がドイツ語である歴史的な背景
  • 標準ドイツ語とオーストリア・ドイツ語の具体的な違い
  • 都市部と地方における英語の通用度のリアルな実情
  • 旅行や滞在ですぐに役立つ挨拶や文化に関する知識
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目次

オーストリアの公用語の基礎知識

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公用語は何語?

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オーストリアの言語について

オーストリアで日常的に話されている言葉はいくつかありますが、法律で定められた公用語は「ドイツ語」ただ一つです。

これは憲法にも明記されており、首都ウィーンからアルプスの小さな村まで、議会や裁判所、役所の手続きなど、公的な場面ではドイツ語が使われます。

しかし、オーストリアは多様な文化を尊重する国でもあります。

昔からオーストリアで暮らしてきた少数民族の言語も大切にされており、クロアチア語、スロベニア語、ハンガリー語は、一部の地域で「準公用語」として認められています。

これらの地域では、学校の授業や役所の窓口でそれぞれの言語が使われています。

オーストリアの主な言語(2024年推計)

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言語 話す人の割合(%) 法的な立場・備考
ドイツ語 90.9% 国の公用語
トルコ語 1.9% 主に移民が使用する言語
ハンガリー語 1.1% ブルゲンラント州などで準公用語
クロアチア語 1.0% ブルゲンラント州などで準公用語
スロベニア語 0.6% ケルンテン州などで準公用語

「ドイツのドイツ語」とは違う?

オーストリアで話されるドイツ語は、ドイツ本国の「標準ドイツ語」をベースにしながらも、独自の単語や発音を持つ「オーストリア・ドイツ語」です。例えば、じゃがいもをドイツでは「Kartoffel(カルトッフェル)」と言いますが、オーストリアでは「Erdapfel(エアダプフェル)」と言います。

とはいえ、ニュースや新聞、学校の授業は標準ドイツ語に近いため、単語の違いで話が通じなくなることはほとんどありません。

なぜドイツ語が公用語なの?

歴史的に、オーストリアは広大なハプスブルク帝国の中心でした。宮廷でドイツ語が使われていた流れから、帝国が解体され現在のオーストリア共和国になった後も、ドイツ語が公用語として引き継がれました。

旅行のヒント

ウィーンやザルツブルクといった観光地では英語がよく通じます。しかし、地方のお店やバスの運転手さんなどには、簡単なドイツ語で話しかける方が喜ばれることもあります。

「こんにちは(Grüß Gott/グリュース・ゴット)」や「ありがとう(Danke/ダンケ)」といった基本的な挨拶を覚えておくと、旅がもっと楽しくなるでしょう。

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ドイツ語が公用語の理由

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オーストリアのドイツ語公用語化の歴史

オーストリアでドイツ語が公用語なのは、単にドイツ語を話す人が多いからというだけでなく、歴史的な背景が深く関係しています。

昔、オーストリアを支配していたハプスブルク家は、神聖ローマ帝国の有力な一族として、政治や文化の中心でドイツ語を使っていました。

その後、多くの民族が暮らす多民族国家「オーストリア帝国」になっても、首都ウィーンの役所ではドイツ語が使われ続け、行政の中心言語として定着しました。

第一次世界大戦後、帝国が解体されると、オーストリアはドイツ語を話す人々が中心の小さな国として再出発します。

この時、1920年に作られた憲法で「ドイツ語は国の言語である」とはっきりと定められました。

第二次世界大戦後もこの憲法は引き継がれ、現在に至るまでドイツ語が公用語としての地位を保っています。

ドイツ語が公用語になるまでの流れ

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主な出来事 公用語としての位置づけ
1526年 ハプスブルク家がボヘミア王位を継承 ハプスブルク家が
ボヘミア王位を継承
宮廷でドイツ語の優位が固まる 宮廷でドイツ語の
優位が固まる
1867年 オーストリア=ハンガリー二重帝国が成立 オーストリア=ハンガリー
二重帝国が成立
オーストリア側の役所言葉がドイツ語に統一される オーストリア側の
役所言葉がドイツ語に
統一される
1920年 連邦憲法が制定される 連邦憲法が制定される ドイツ語が国の公式言語として憲法に明記される ドイツ語が国の公式言語
として憲法に明記される
1955年 オーストリア国家条約 オーストリア国家条約 中立国として再出発。言語に関する決まりは憲法を引き継ぐ 中立国として再出発。
言語に関する決まりは
憲法を引き継ぐ
1992年 憲法改正 憲法改正 少数民族の言語の権利も明記されるが、ドイツ語の優位は維持 少数民族の言語の権利も
明記されるが、
ドイツ語の優位は維持

公用語化の3つの重要な段階

①帝国時代から行政で使われてきた歴史

ハプスブルク家が神聖ローマ帝国の中心として、宮廷や政治の場でドイツ語を使用。多民族国家となった後も、行政の中心言語として定着しました。

②国の形が変わったこと

第一次世界大戦後の帝国解体により、オーストリアはドイツ語を話す人々が中心の小さな国として再出発することになりました。

③憲法で定められたこと

1920年の連邦憲法制定により、「ドイツ語は国の言語である」と法的に明文化され、現在まで引き継がれています。

旅行・留学での活用ポイント

このように、オーストリアの公用語がドイツ語である背景には、①帝国時代から行政で使われてきた歴史、②国の形が変わったこと、③憲法で定められたこと、という3つの段階があります。

旅行や留学の際は、まず標準的なドイツ語を覚えておけば、全国どこでもスムーズにコミュニケーションが取れるでしょう。

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標準ドイツ語とオーストリア・ドイツ語の違い

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オーストリア・ドイツ語の特徴

オーストリアの公用語は「オーストリア・ドイツ語」と呼ばれ、ドイツで話される標準ドイツ語ととてもよく似ていますが、単語や発音、文法にいくつかユニークな特徴があります。

その違いを知ると、オーストリアでの滞在がもっと面白くなります。

1. 日常でよく使う単語の違い

一番分かりやすいのが単語の違いです。特に食べ物や日用品の名前が違うことが多く、レストランやスーパーで戸惑うかもしれません。代表的な例をいくつか見てみましょう。

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日本語の意味 標準ドイツ語 オーストリア・ドイツ語
じゃがいも Kartoffel Erdapfel
トマト Tomate Paradeiser
あんず Aprikose Marille
小型のパン Brötchen Semmel
生クリーム Sahne Schlagobers
買い物袋 Tüte Sackerl
冷蔵庫 Kühlschrank Eiskasten
1月 Januar Jänner
2. 柔らかく、音楽のような発音

オーストリア・ドイツ語は、ドイツ北部のハキハキとした発音に比べ、全体的に柔らかく聞こえる傾向があります。特にウィーンでは、言葉の響きが音楽のようだと言われることもあります。

3. 日常会話でみられる文法の違い

話し言葉では、文法にも少し違いが見られます。例えば、標準ドイツ語では「Ich bin gesessen(私は座っていた)」と言うところを、オーストリアでは「Ich habe gesessen」と言うことがあります。

標準ドイツ語: Ich bin gesessen

オーストリア・ドイツ語: Ich habe gesessen

また、「〜ちゃん」や「小さな〜」といったニュアンスで使う言葉の語尾が、標準語の「-chen」に対し、オーストリアでは「-erl」となることが多く、親しみやすい響きになります。

標準ドイツ語: 語尾「-chen」

オーストリア・ドイツ語: 語尾「-erl」(親しみやすい響き)

4. 旅行のヒント

観光地では標準ドイツ語で全く問題ありませんが、地元のレストランのメニューや市場ではオーストリア独自の単語がよく使われます。「Erdapfel=ポテト」「Paradeiser=トマト」といった食材名だけでも覚えておくと、食事の注文がぐっと楽になります。

オーストリア・ドイツ語は、標準ドイツ語とほとんど同じ感覚で通じますが、こうした細かな違いが豊かな文化の証です。ぜひ現地でその響きや表現を楽しんでみてください。

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英語は通じる?都会と地方での違い

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オーストリアの英語の通じやすさ

オーストリアはヨーロッパの中でも英語力が高い国として知られていますが、都市部と地方では英語の通じやすさに少し差があります。

1. 国全体で英語力はハイレベル

ある民間の英語能力調査(2023年版)では、オーストリアは調査対象の世界113カ国中3位と、非常に高い評価を受けています。都市別に見ても、首都ウィーンや学術都市グラーツは特に高いスコアを記録しています。

都市・州別の英語力スコアの例(2023年)

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区分 具体例 評価 備考
大都市 グラーツ 非常に高い 学術都市で、留学生が多い 学術都市で、
留学生が多い
リンツ 非常に高い 工業やIT企業が集まっている 工業やIT企業が
集まっている
ウィーン 非常に高い 首都であり、観光客や国際機関が多い 首都であり、観光客や
国際機関が多い
地方州 チロル州 高い アルプスの山岳リゾート地 アルプスの
山岳リゾート地
フォアアールベルク州 高い スイス国境に近く、工業と観光が盛ん スイス国境に近く、
工業と観光が盛ん
ケルンテン州 高い 南部の湖水地方で、農業が中心 南部の湖水地方で、
農業が中心
2. 都市部で英語が通じやすい理由

ウィーンなどの大都市には、国際的な大学や企業が多く、世界中から学生やビジネスパーソンが集まります。また、観光客も多いため、ホテルやレストラン、交通機関の英語対応は万全です。ウィーン観光局も「ドイツ語ができなくても問題ありません」と案内しているほどです。

3. 地方で英語が通じにくい場面

一方、アルプスの山間部や小さな村では、英語を話せる人が限られていることがあります。個人経営の宿やバスの運転手さんとは、簡単な単語や身振り手振りでのコミュニケーションが必要になるかもしれません。ただし、地方でも若い世代は学校で英語を学んでいるため、基本的なことで困る場面は少ないでしょう。

4. 旅行に役立つアドバイス
都市間の移動は英語でOK:鉄道の券売機や駅の案内表示は英語に切り替えられます。
地方では簡単なドイツ語を準備:「英語を話せますか?(Sprechen Sie Englisch?)」や「〇〇はどこですか?(Wo ist …?)」といったフレーズを覚えておくと安心です。
オフライン翻訳アプリを活用:山間部では電波が届きにくいこともあるので、事前にダウンロードしておくと便利です。

結論として、オーストリアは全体的に英語が通じやすい国ですが、滞在する場所によって少し差があります。旅行の計画を立てる際は、行き先に合わせて少しだけドイツ語の準備をしておくと、より安心して旅を楽しめるでしょう。

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歴史が育んだ言語文化

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オーストリアの言語文化史

オーストリアの言語文化は、かつての多民族国家「ハプスブルク帝国」の時代から、現代に至るまでの歴史の中で形作られてきました。

公用語はドイツ語ですが、なぜ豊かな方言や少数民族の言語、独自の文学や音楽が共存しているのでしょうか。

その背景を歴史と共に見ていきましょう。

時代ごとの言語と文化
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時代・出来事 主な言語政策・社会の動き 文化への影響
18世紀後半 マリア・テレジアなどの改革で、行政用語としてドイツ語が標準化される。 マリア・テレジアなどの改革で、
行政用語としてドイツ語が
標準化される。
ドイツ語での出版物が増加。一方で、音楽家シューベルトは方言を歌曲に取り入れた。 ドイツ語での出版物が増加。
一方で、音楽家シューベルトは
方言を歌曲に取り入れた。
1867年
二重帝国成立 二重帝国成立
チェコ語やハンガリー語なども地方の行政で使われるようになる。 チェコ語やハンガリー語なども
地方の行政で
使われるようになる。
プラハやブダペストとウィーンが文化的に競い合い、「カフェ文化」が花開いた。 プラハやブダペストとウィーンが
文化的に競い合い、
「カフェ文化」が花開いた。
1920年
共和国憲法 共和国憲法
ドイツ語が「国の言語」として憲法に明記される。 ドイツ語が「国の言語」として
憲法に明記される。
ベルリン文学との連携が強まる一方、地方の演劇では方言が守られ続けた。 ベルリン文学との連携が強まる
一方、地方の演劇では
方言が守られ続けた。
1955年以降
戦後復興期 戦後復興期
方言や民謡が「オーストリアらしさ」の象徴として見直される。 方言や民謡が
「オーストリアらしさ」の象徴
として見直される。
ザルツブルク音楽祭でドイツ語オペラと共に方言の喜劇が人気を博す。 ザルツブルク音楽祭で
ドイツ語オペラと共に
方言の喜劇が人気を博す。
2001年
欧州憲章批准 欧州憲章批准
クロアチア語やスロベニア語などが教育やメディアで保護されるようになる。 クロアチア語やスロベニア語などが
教育やメディアで
保護されるようになる。
少数民族向けのテレビ番組や、2言語併記の看板が各地に増える。 少数民族向けのテレビ番組や、
2言語併記の看板が
各地に増える。
帝国の記憶と「オーストリアらしさ」

19世紀のハプスブルク帝国には10以上の言語があり、役所はドイツ語を使いつつも、市民からの様々な言語での訴えを受け付けていました。

帝国が解体され、ドイツ語を話す人々が中心の国になると、憲法でドイツ語が公用語と定められました。

しかし、生活に根付いた地方の方言は、ラジオや演劇を通じて大切にされ、「オーストリアらしさ」を象徴する文化として今も残っています。

現代の多言語社会

現在、オーストリアは少数民族の言語を法律で保護し、ウィーンでは国連機関などの影響で英語の存在感も増しています。

こうした中で、標準ドイツ語を基本としながら独自の単語や響きを持つ「オーストリア・ドイツ語」は、国のアイデンティティとして映画や文学で積極的に使われています。

言語文化の豊かさ

オーストリアの言語文化は、ドイツ語という一本の大きな幹に、歴史の中で育まれた多様な枝葉が茂っているようなものです。

この背景を知ると、現地の言葉や文化に触れる旅がより一層味わい深いものになるでしょう。

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オーストリアの公用語と旅行術

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旅行前に覚えたい便利な挨拶フレーズ

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オーストリアの定番挨拶フレーズ

オーストリアでは、お店やレストランに入るときに「まず挨拶」をするのがごく自然な習慣です。

英語だけでも十分旅行はできますが、現地の言葉で挨拶を交わすと、より温かく迎え入れてもらえるでしょう。

ここでは、ウィーンからアルプスの村まで、どこでも使える基本的なフレーズをまとめました。

場面別・定番挨拶フレーズ
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場面 オーストリアの定番フレーズ 読み方 日本語の意味と備考
店やホテルに入る時 Grüß Gott グリュース・ゴット 「こんにちは」の最も丁寧で一般的な挨拶。返事も同じ言葉でOK。 「こんにちは」の最も丁寧で
一般的な挨拶。
返事も同じ言葉でOK。
親しい相手や店員に Servus セルヴス 「やあ」「じゃあね」と、出会いと別れの両方で使える便利な言葉。 「やあ」「じゃあね」と、
出会いと別れの両方で
使える便利な言葉。
ハイキング中 Griaß di / enk グリアス・ディ/エンク 「こんにちは」(相手が1人/複数)。山道で目が合ったらぜひ使ってみましょう。 「こんにちは」
(相手が1人/複数)。
山道で目が合ったら
ぜひ使ってみましょう。
一般的な丁寧語 Guten Tag グーテン・ターク 「こんにちは」。ドイツでも使われる標準的な挨拶。都市部では無難。 「こんにちは」。
ドイツでも使われる標準的な
挨拶。都市部では無難。
朝の挨拶 Guten Morgen グーテン・モルゲン 「おはようございます」。午前10時頃まで使えます。 「おはようございます」。
午前10時頃まで使えます。
別れ際(丁寧) Auf Wiederschauen アウフ・ヴィーダシャウエン 「さようなら」。オーストリアらしい丁寧な別れの挨拶。 「さようなら」。
オーストリアらしい丁寧な
別れの挨拶。
別れ際(親しい) Pfiat di プフィアット・ディ 「じゃあね」。南部でよく聞かれる、温かみのある表現。 「じゃあね」。
南部でよく聞かれる、
温かみのある表現。
感謝を伝える時 Danke ダンケ 「ありがとう」。返事は「Bitte(ビッテ=どういたしまして)」。 「ありがとう」。
返事は「Bitte
(ビッテ=どういたしまして)」。
使い分けのコツ
まずは「Grüß Gott」から:この一言を覚えておけば、どこでも好印象です。
「Servus」は万能選手:カフェで隣の人と話すきっかけや、別れ際に気軽に使えるので便利です。
山歩きでは「Griaß di」:ハイキングコースですれ違う人との挨拶は、気持ちの良いマナーです。
別れ際は使い分けて楽しむ:ウィーンでは「Auf Wiederschauen」、地方では「Pfiat di」と使い分けると、旅慣れた雰囲気になります。
心のこもった挨拶で豊かな旅を

オーストリアでは、短い挨拶一つでコミュニケーションがぐっと豊かになります。まずはこの中のいくつかを使ってみてください。たとえ発音が完璧でなくても、笑顔を添えればきっと気持ちは伝わります。

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レストランで役立つ単語と注文フレーズ

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オーストリアのレストラン・メニューガイド

オーストリアのレストランでは英語のメニューも増えてきましたが、現地の言葉で書かれたメニューに出会うことも少なくありません。

「Erdäpfelsalatって何だろう?」と迷わないために、注文で役立つオーストリア独自の単語や、アレルギー表示の見方などをまとめました。

これらを知っておくだけで、食事の時間がもっと楽しく、スムーズになります。

1. オーストリア独自の食べ物・飲み物の名前
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日本語 標準ドイツ語 オーストリア・ドイツ語 発音の目安
じゃがいも Kartoffel Erdäpfel エアダプフェル
トマト Tomate Paradeiser パラダイザー
小型パン Brötchen Semmel ゼンメル
あんず Aprikose Marille マリレ
生クリーム Sahne Schlagobers シュラーゴーバース
クレープ風菓子 Pfannkuchen Palatschinken パラチンケン
ウィーン風カツレツ Wiener Schnitzel Wiener Schnitzel ヴィーナー・シュニッツェル
ポテトサラダ Kartoffelsalat Erdäpfelsalat エアダプフェルザラート
お会計お願いします Zahlen, bitte. Zahlen, bitte. ツァーレン・ビッテ
2. 簡単な注文フレーズ
Ich hätte gern … (イッヒ・ヘッテ・ゲルン …) ― 「〜をお願いします」
Noch ein Bier, bitte. (ノッホ・アイン・ビア・ビッテ) ― 「ビールをもう一杯ください」
Könnte ich die Speisekarte auf Englisch bekommen? (ケント・イッヒ・ディ・シュパイゼカルテ・アウフ・イングリッシュ・ベコメン?) ― 「英語のメニューはありますか?」

料理名の後に bitte(ビッテ)をつけるだけでも、「〜をください」という意味で通じます。

3. メニューのアレルギー表示の見方

オーストリアでは、法律でアレルギー物質の表示が義務付けられています。メニューの料理名の横にあるアルファベットは、以下のアレルゲンが含まれていることを示しています。

主要なアレルギーコード:

A 小麦など(グルテン) – パン、パスタ

C 卵 – マヨネーズ、ケーキ

D 魚 – 魚介ソース

G 牛乳・乳製品 – ミルク、チーズ

L セロリ – スープ

M マスタード – ドレッシング

例えば「Wiener Schnitzel A, C, G」とあれば、「小麦、卵、乳製品を使用」という意味です。アレルギーがある方は、この表示を参考にし、店員さんに確認しましょう。

4. 支払いとチップ

会計はテーブルで行うのが一般的です。「Zahlen, bitte.」と伝えましょう。チップは必須ではありませんが、サービスに満足した場合、合計金額の5〜10%程度上乗せして、キリの良い金額を渡すのがスマートです。

食文化をより深く楽しむために

これらの単語やフレーズをスマホにメモしておくだけで、現地の食文化をより深く、安心して楽しむことができるでしょう。

【参考文献・公式情報】

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ユーロの通貨表記と数字の数え方

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オーストリアの数字・通貨表記ガイド

オーストリアで買い物をする際、値札の「€ 1,90」といった表記に気づくかもしれません。

これは日本の「1.90円」とは小数と桁区切りの記号が逆で、慣れないと少し戸惑うことがあります。

このヨーロッパ式のルールと、ドイツ語での数字の読み方を知っておくと、支払いがスムーズになります。

1. 通貨表記のルール

オーストリアを含む多くのヨーロッパの国では、小数点を「コンマ(,)」で、千の位の区切りを「ピリオド(.)」またはスペースで表します。

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項目 オーストリアの標準 日本や英語圏の表記
小数点の記号 コンマ ( , ) ピリオド ( . ) € 1,90 (1ユーロ90セント) € 1,90
(1ユーロ90セント)
桁区切りの記号 ピリオド ( . ) or 空き コンマ ( , ) € 7.654.321,12 € 7.654.321,12
ユーロ記号(€)の位置 金額の前(€ 1,50) 金額の後が多い(1.50 €) 店頭の値札など 店頭の値札など

※1ユーロ(€) = 約171円(2025年6月時点)

2. 数字の読み方:一の位が先

ドイツ語で21以上の数字を読むときは、「一の位 → と → 十の位」という順番になります。例えば「21」は「1と20(einundzwanzig)」と読みます。これは日本語や英語とは逆なので、少し慣れが必要です。

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数字 ドイツ語の読み方 発音の目安 意味
21 einundzwanzig アインウントツヴァンツィヒ 1と20
57 siebenundfünfzig ズィーベンウントフュンフツィヒ 7と50
99 € neunundneunzig Euro ノインウントノインツィヒ オイロ ノインウントノインツィヒ
オイロ
99ユーロ
3. 金額を声に出すときのコツ

€ 1,50 は「アインス・オイロ・フュンフツィヒ」またはシンプルに「アインス・フュンフツィヒ」と言います。

€ 12,00 は「ツヴェルフ・オイロ」(12ユーロ)と、セント部分は省略するのが自然です。

4. レジで使える簡単フレーズ
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場面 ドイツ語のフレーズ 日本語の意味
値段を尋ねる Was kostet das? これはいくらですか?
合計を確認する Wie viel macht das zusammen? 合計でいくらですか? 合計でいくらですか?
支払い方法を伝える Ich zahle bar. / Mit Karte, bitte. 現金で払います / カードでお願いします 現金で払います /
カードでお願いします
チップを渡す(お釣り不要) Stimmt so, danke. お釣りは取っておいてください お釣りは取っておいて
ください
スムーズな買い物のために

オーストリアでの買い物では、小数点と桁区切りの「,」と「.」が日本と逆であること、そして数字の読み方が「一の位」から始まることを覚えておくと、値段の聞き取りや支払いがずっと楽になります。

【参考文献・公式情報】

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オーストリアはどんな国?人々の特徴は?

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オーストリアの基本情報と国民性ガイド

アルプスの美しい自然と音楽の都ウィーンで知られるオーストリアは、ヨーロッパの中では中規模の国ですが、国民一人当たりの豊かさや幸福度ランキングでは常に上位に入る安定した国です。

その特徴は、人々の暮らしにも表れています。

オーストリアの基本データ
指標 最新の数値
人口 約918万人(2025年1月推計) 約918万人
(2025年1月推計)
1人当たりGDP 約58,190米ドル (約995万円) (2024年) 約58,190米ドル
(約995万円)
(2024年)
生活満足度 7.2 / 10点満点(2024年 OECD) 7.2 / 10点満点
(2024年 OECD)
世界幸福度ランキング 14位(2024年) 14位(2024年)
「オーストリア人らしさ」とは?

オーストリアの人々は、リラックスした温かい社交文化「Gemütlichkeit(ゲミュートリヒカイト)」を大切にする一方で、仕事や公の場では時間やルールをきっちり守る真面目さも持ち合わせています。

この「ゆったりした雰囲気」と「きっちりしたルール」の同居が、オーストリアの魅力の一つです。

時間を守る:約束の時間には5〜10分前に着くのがマナー。遅刻は失礼と見なされます。
率直で丁寧な会話:直接的な物言いをしますが、相手への敬意は忘れません。初対面では苗字で呼び合い、親しくなると名前で呼び合うのが一般的です。
「ゲミュートリヒカイト」とカフェ文化:カフェや居酒屋で、友人や家族とゆっくり会話を楽しむ時間を大切にします。
伝統とコミュニティを愛する:地域のお祭りや音楽などの活動に積極的に参加し、地元への愛着が強いです。
文化研究から見たオーストリア人

ある文化研究によると、オーストリア人は「上下関係に厳しくなく、対話を好む」一方で、「計画性を重んじ、目標達成に誇りを持つ」傾向があるとされています。

旅行者として心がけたいこと

旅行者としては、丁寧な挨拶と時間を守る姿勢を心がけることで、現地の人々の温かさに触れながら、効率的で快適なサービスを受けることができるでしょう。


オーストリアは幸福度も高く安定した国ですが、旅行の計画を立てる際は安全情報も重要です。

ヨーロッパ全体の最新の治安情報については、「ヨーロッパ治安ランキング2025|安全な旅行先と注意すべき地域」の記事で詳しく解説しています。

【参考文献・公式情報】

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日本とオーストリアの気になる関係

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日本・オーストリア関係の全体像

日本とオーストリアの公式な交流は、1869年の条約締結に始まり、150年以上の長い歴史があります。

現在では経済、文化、人的交流など、様々な分野で良好な関係を築いています。

経済:お互いの得意分野で協力

日本とオーストリアは、共に技術力の高い国として、自動車部品や機械、医薬品などを輸出し合っています。2024年の貿易額は以下の通りです。

日本からオーストリアへの輸出:約23.4億ユーロ(約4,000億円)

オーストリアから日本への輸入:約24.8億ユーロ(約4,240億円)

約100社の日本企業がオーストリアで活動する一方、約80社のオーストリア企業が日本に進出しており、特に環境技術や精密機械といった分野で協力関係が深まっています。

文化:音楽とアニメが繋ぐ交流

クラシック音楽の繋がりは特に有名で、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の日本公演は毎年絶大な人気を誇ります。

逆に、近年では日本のアニメソングを演奏するオーケストラコンサートがウィーンで開催され、現地の若者を中心に人気を集めています。

こうした文化交流は、両国の若者がお互いの国に興味を持つきっかけにもなっています。

観光:コロナ禍から回復し、往来が活発に

2023年には、オーストリアを訪れた日本人観光客の宿泊数が前年から140%増と大きく回復しました。

一方、日本を訪れるオーストリア人観光客もコロナ禍前の水準に近づいています。

直行便はありませんが、乗り継ぎ便で約13〜15時間でアクセスできます。

学術・研究:未来に向けた協力

高齢化社会といった共通の課題に対し、介護ロボット技術の共同研究が進められています。また、大学間の学生交流も盛んで、若い世代の交流が活発に行われています。

日本とオーストリアの主な歩み

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出来事 意義
1869年 修好通商条約を締結 両国の公式な交流がスタート 両国の公式な交流が
スタート
1957年 外交関係を再開 戦後の国交が正常化 戦後の国交が正常化
2019年 外交関係樹立150周年 両国で多くの記念イベントが開催 両国で多くの記念
イベントが開催
2024年 社会保障協定に署名 駐在員などの二重の保険料負担がなくなり、ビジネス交流を後押し 駐在員などの二重の保険料
負担がなくなり、
ビジネス交流を後押し

両国関係の特徴と今後の展望

日本とオーストリアは、国の規模は違いますが、技術や芸術を大切にする点で共通しており、バランスの取れた良い関係を築いています。

今後も経済や文化の分野で、さらに協力関係が深まっていくことが期待されます。


オーストリアと日本の良好な関係について解説しました。

ヨーロッパ全体の親日国について、さらに詳しく知りたい方は「ヨーロッパで親日国ってどこ?歴史、文化、国民性から紐解く親日感情を解説!」の記事もおすすめです。

【参考文献・公式情報】

オーストリアの公用語と文化、旅行術の総まとめ

  • オーストリアの憲法で定められた唯一の公用語はドイツ語
  • 一部地域ではクロアチア語やスロベニア語なども準公用語として認められている
  • ハプスブルク帝国時代に行政言語としてドイツ語が定着した歴史的背景を持つ
  • オーストリアで話されるドイツ語は独自の単語や発音を持つオーストリア・ドイツ語
  • じゃがいもは「Erdapfel」、トマトは「Paradeiser」など食文化に単語の違いが多い
  • オーストリアは世界的に見ても英語能力が非常に高い国の一つ
  • ウィーンなどの都市部では英語が広く通じるが、地方では簡単なドイツ語が役立つ
  • 店に入る時の挨拶「Grüß Gott」は最も丁寧で一般的な表現
  • 親しい間柄では出会いと別れの両方で「Servus」という挨拶が使える
  • レストランのメニューには法律で定められたアレルギー表示がある
  • 通貨の小数点はコンマ(,)、桁区切りはピリオド(.)で日本と逆
  • ドイツ語の21以上の数字は「一の位」と「十の位」の順で読む
  • 時間を厳守する真面目さと、ゲミュートリヒカイトという温かい社交文化が共存する
  • 日本とは150年以上の交流史があり、経済・文化の両面で良好な関係にある
  • クラシック音楽だけでなく、日本のアニメ文化もウィーンで受け入れられている
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